2009年12月19日

「とぜんなか」って、どんな状態?

「あら~、ひとりでお留守番なら、どぜんなかろねぇ~!」
小さい頃、家に一人で遊んでいると、
近くのばあちゃん達から、よくこんな言葉を掛けられていました。

この「とぜんなか」という形容詞、
品詞分解してみますと、
「とぜん」という名詞と「無か」という形容詞の二つの言葉に分かれます。
熊本県民の方なら、薄々ご存じの方も多いかとは思いますが・・・

原典は、鎌倉時代後期の『徒然草』(つれづれぐさ)。
吉田兼好(卜部兼好、兼好法師)が書いた随筆です。

あの有名な書き出し
つれづれなるまゝに、日ぐらし硯に向かひて、
心にうつりゆくよしなしごとをそこはかとなく書き付くれば、
あやしうこそ物狂ほしけれ・・・


試しに、「とぜんなか」を古語辞典でひも解いてみますと、
「と・ぜん(徒然)」(名詞・形容動詞ナリ活用=つれづれ)
“することもなく退屈なこと・ものさびしいこと”とあります。
つまり、原典では“つれづれ”と読んでいる熟語を
そのまま音読みで読み下し、形容動詞にしてしまった言葉が、
そのまま熊本弁として残っている訳なんですなぁ~!

ちなみに、中世の日葡(ポルトガル)辞書のなかにも、
「 Tojen(トゼン)」(一人ぼっちで寂しくしていること)という語句があるそうです。

かつて京都で使われた言葉が同心円状に伝わり、だんだん全国へ及び、
現在では同心円の端にだけ残っている訳です。
これを、“方言周圏論”といいますが、
このブログの考察の重きをなすテーマでありま~す(^◇^)



Posted by 黒猫ク~ at 13:20│Comments(0)
 
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